一般逆行列について

線型連立方程式における解の種類:逆行列の存在

線型連立方程式

Ax = b

に対して,解 x を求める手法には,Cramerの公式や余因子や掃出法等,複数存在する.逆行列を求めることにより,

x = A^{-1} b

から解を得ることができる. Ax=b と表記される全ての場合で,解が存在する訳ではない. 行列 A の形状 ( m \times n ),及び,階数( rank(A) ) によってこれらの振る舞いは変化し,逆行列の存在が左右される.

行列の形状,階数によって,以下の4つに分類される.

  1. 行列 Am \times m (m=n) 正方行列で, rank(A)=m (フルランク)である.

  2. 行列 Am \times n (m>n) 縦長行列で, rank(A)=m (フルランク)である.

  3. 行列 Am \times n (m<n) 横長行列で, rank(A)=m (フルランク)である.

  4. フルランクでない.( 行列 A の階数が rank(A)<m )

これらの解は次のように表現される.

  1. 逆行列 A^{-1} を求めることができ,一意に解が決定される.(決定系)

  2. 全ての解を無矛盾に満たす解が存在しない.(優決定系・不能)

  3. 方程式が不足しているため,解が一意に定まらない(劣決定系・不定)

  4. 方程式に重複(矛盾)が存在する.重複を除けば(a),(b),(c)のどれかに帰着する.

../_images/MatrixShapeAndSolutionType1.png

ここでは(a)以外は解を一意に決定できない.これら方程式の解を得る( 存在しないものもあるが,極力合理的に解らしきものを採用する )戦略は次である.

  1. 逆行列 A^{-1} を求めて, b にかけ, x=A^{-1}b を求める. ( 決定解 )

  2. 全方程式から平均的に近い解(最小二乗解)を求める. ( 最小二乗解 )

  3. 全解候補のうち,もっともノルムの小さいものを求める.( 最小ノルム解 )

  4. 全方程式からの「二乗誤差最小」でかつ「ノルムがもっとも小さいもの」を選ぶ.((b)と(c)を両方満たす解)

これをイメージとして表すと,

../_images/MatrixShapeAndSolutionType2.png

解はそれぞれ,

  1. 逆行列から決定解を得る.

x=A^{-1}b

(b) 最小二乗解を得る. 条件式は,

x^* = argmin \dfrac{1}{2} ||Ax-b||^2

この式は f(x)=||Ax-b||^2 とした際の \partial f(x) / \partial x = 0 であるから,

\dfrac{\partial ||Ax-b||^2}{\partial x} = 0 \\
A^{T} A x^* - A^{T} b = 0 \\
x^* = ( A^{T} A )^{-1} A^{T} b

行列( A^{T} A )は正則なnxn対称行列で, A^{T} A x = A^{T} b は正規方程式と呼ばれる.

(c) 最小ノルム解 条件式は,

x^* = argmin \dfrac{1}{2} ||x||^2 s.t. Ax = bw

Lagrangeの未定乗数を用いてとけば,

L = ( \dfrac{1}{2} ||x||^2 ) + \lambda ( Ax = bw )

\dfrac{ \partial L }{ \partial x       } = x - A^{T} \lambda = 0 \\
\dfrac{ \partial L }{ \partial \lambda } = - A x + b = 0 \\

\begin{bmatrix}
x^* \\ \lambda
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
A^{T} ( A A^{T} )^{-1} b \\ ( A A^{T} )^{-1} b
\end{bmatrix}

  1. A = BC

A^{-} = C^{T} ( C C^{T} )^{-1} ( B^{T} B )^{-1} B^{T}

Note

参考文献( 元ネタというか,ほぼこのスライドのまとめ )