ナポレオン戦争 ( The Napoleonic Wars -- Mike Rapport )

  • ナポレオン戦争 ( The Napoleonic Wars )

  • 著者:Mike Rapport , 訳者:楠田悠貴

本の構成

  • 第一章 期限

  • 第二章 フランス革命戦争

  • 第三章 ナポレオン戦争

  • 第四章 総力戦、革命戦争

  • 第五章 兵士と民間人

  • 第六章 海戦

  • 第七章 人民戦争

  • 終わりに

主張

  • ナポレオン戦争は、一般的に、フランス革命戦争と区別して考えられるが、一連の戦争として考えるべきである.

    • ナポレオン戦争の起源は、フランス革命戦争、もしくはそれ以前の長期的な国際関係の緊張にある.

    • 一連の戦争( フランス戦争 )として捉えることで、これは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカを含んだ世界戦争となる.

  • フランス戦争は、旧体制 v.s. 革命勢力といったイデオロギー対立戦争ではない.

    • 各国は、それぞれの利益を追求するが故に、対フランス戦線に集中することができず、フランスは全ヨーロッパを席巻するに至る.

    • スペイン独立戦争は、フランス支配に対するイデオロギー的な意識は乏しい.国家への帰属意識は薄く、個人、村、世帯、宗教、共同生活組織への帰属意識、これらを存続させる目的のもと、情勢不安に便乗した略奪行為がスペイン・ゲリラ( ゲリーリャ )の実態.フランス正規軍に抗する軍事的圧力は皆無であり、単なる嫌がらせでしかなく、フランス正規軍をスペインに釘付けにできるほど組織的な反抗ではなかった.しかし、フランスのスペイン統治を困難とし、ナポレオン政府に損害を与えていたのは間違いない.

  • フランス戦争が現代にもたらしたことは、「現代我々が生きる時代の到来を早めたことである」

ナポレオン・フランスは、何故、ヨーロッパの大部分を手中にすることができたのか

  • ナポレオンは、強大な民衆の支持、軍事力を背景として、急進的な軍制・税制改革を進めることができた.

  • 合理的な徴収システムの確立と中央集権化により、激しい搾取を継続することができ、戦争物資を効率的に収集することができた.

  • 戦争の原動力は、最初、国民の政治的不満から出発した.フランス革命戦争時には、旧体制からの開放と自由平等のための共和制の確立がイデオロギーとして掲げられたが、ナポレオンの台頭以後、職業軍人の帰属意識、軍事的カリスマへの敬慕が戦争継続の原動力へと変遷する.

各国への影響

  • スペイン:ゲリラによるフランス政府への反抗.組織だった反抗はできず、略奪・報復の繰り返しにより、国土は荒廃.結果的に、フランスのスペイン経営を妨害し、対仏大同盟に対抗する軍事的兵站拠点としてスペインを有効活用することができなかった.

  • プロイセン:「下から、あるいは外からの暴力的な衝撃を通すことなく、政府の知恵を通じてなされる...積極的革命」が進む.農奴制の廃止、土地所有の制限の廃止、市民権の確立、ユダヤ人の市民権の獲得、税制改革、ギルドの権限を縮小.愛国主義(パトリオティズム)の覚醒.プロイセンへの帰属意識の強化を超えて、ドイツ民族としての統一の必要性が声高となり、ドイツ・ナショナリズムを芽生えさせた.

  • オーストリア:国土防衛軍(ラントヴェーア)を創設する軍制改革.カール大公らにより、軍事的合理化が進み、これに伴い鞭打ち刑の廃止等、市民権の確保、旧体制からの脱却が進む.プロイセン同様、ドイツ・ナショナリズムへの寄与.

  • ロシア:パトリオティズムの覚醒.ロシアは騎馬資源に恵まれていたが、銃・弾薬といった近代資源の生産基盤に難を抱えていた.軍制改革.19世紀ロシア台頭の基盤となる.ナポレオンの農奴解放宣言への恐れもあり、農奴の待遇改善への寄与.

  • イギリス:イングランド人ではなく、イギリス人としてのパトリオティズムの成長.フランス戦争へのコミットに従い、参政権・市民権拡大を要求.他国植民地からの収奪、及び、フランス戦争への物資・資源供給を通したフランスの欧州覇権確立への抵抗.